後の山(うしろのやま) 上野より北手の山をすべて後の山といふ。土人の稲葉山といふもこの中にあり。
 すまの巻
 煙いと近くときどき立ちくるを、これやあまの塩やくならんとおぼしあたるは、おはしますうしろの山にしばといふものふすぶるなりけり。めづらかにて源氏君、
 山がつのいほりにたけるしばしばもこととひこなんこふる里人
 冬になりて雪ふりあれたる頃、空のけしきもことにすごくながめたまふて、きんをひきすさびたまふて、よしきよに歌うたはせ大輔よこぶえふきてあそびたまふ。心とどめてあはれなるてなど弾きたまへるに、こともののこゑどもはやめてなみだをのごひあへり。(下略)
  『大木』  月出づるうしろの山は雲はれて須磨のいはりにかへる浦風    家 長
  『千首』  とふ人のおもひよりしと柴の庵のうしろの山に道つけにけり    為 尹

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