円生山明要寺(たんしようさんみようようじ) 同じ荘にあり。この山高嶺絶壁にして坂路嶮し。
谷の深き事数十仭、その北岸に傍だつて水槽を空に架し流を通ず。槽の長さ六十余丈、風景はなはだ奇なり。下流は衝原村を歴て播州に入る。当寺むかしは大厦にして講堂厳重たり。天文年中に荒廃す。古義真言宗京師三宝院の末派、智勝院舟井坊・大光光院尾崎坊これを守る。
本尊十一面観世音 当山開基は欽明天皇の御宇百済国聖明王の太子童男行者なり。この人本朝へ赴かんとて、銅船に乗って、我が国赤石の浦に着岸す。時に鬢髪に雪を載きたる老翁、忽然として来たり、汝は日本に有縁の地あり、これより丑寅に当たって名山ありとて独鈷を投けらる。童男行者これを慕うてこの山に登るに・紫雲空にたなびき音楽聞こえ花降りければ恭礼渇仰す。その時老翁たちまち大悲の尊像と現れ光を放つ。童男その御姿をみづから彫刻して本尊に仰ぎ奉りける。
鎮守 山王権現・牛痢天王・大織冠を祭る。
十王堂 中尊地歳菩薩、脇士に十王を安ず。
護法善神祠 本地大日如来を安置す。
大師堂 弘法大師を安す。護摩堂とも云ふ。
鐘堂 その外客殿厨等あり。余はここに略す。




丹生神社・明要寺跡 神戸市北区山田町坂本 丹生山(たんじょうさん・にぶやま)山頂

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