須磨簾(すまのすだれ) 西須磨の家毎に、常に表の方簾を垂るるなり。
土人日く、むかし一谷の城いまだならざるの前、安徳天皇をはじめ奉り大官人このすまの里海十の苫家に入らせたまひ、しばらく行宮としたまふ。その時、家毎に翠簾をかけしなり。その遺風今にありけるとぞ。
  朧夜やことさら須磨の古簾                  既 白

名産礒馴味醤(そなれみそ) 麦にて製したる味噌なり。近世この里の名物とす。
また潮を汲んで粥を煎るを潮雑水とて、この里の農家には今も食しけるなり。
風月庵のぬし須磨に閑居のをり狂歌を読める。
  佗びぬれば身にしむばかり味かりきすまの麦みそ潮雑水      似 雲
  見るうちに月しづみけり須磨の雨                闌 更

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