真野榛原(まののはきはら) この辺の榛木原をいふなるべし。
『万葉』 また『風雅集』には人丸とあり。謬りならん。
いざやこら大和へじゃやく白菅のまののはぎ原手折りてゆかん 高市黒人
同
白菅の真野の榛はら心にもおもはぬ君が衣にぞする
『類字和歌集』に、真野は大和国とあるについて、契沖が『吐懐編』に日く「いざやこら大和へはやくの歌は、『万葉集』第三にあつて、高市黒人の歌二首の内なり。上に「白菅のまののはぎ原ゆくさくぞ君こそえらめまののはぎはら」とあれば、津の国なり。また大和へはやくといふにも、やまとならぬ事あらはれたり。はぎはらは榛原と書きて、はりの木はらなり。このゆゑに第七の寄木のうたに「白菅の真野の榛ほら心にもおもはぬ家か衣にぞする」。榛は『日本紀』蓁摺衣と有りて、皮をとりて染具に用ひらるるものなり」。