生田神社(いくたのじんじゃ) 生田宮村にあり。
『延喜式』に曰く「明神大、月次、相嘗、新嘗」。近隣二十四ヶ村の産土神とす。例祭七月三十日、また八月二十日、古は生田川の水上、砂山にありて、地名を生田長狭国と称す。武庫郡の広田国の類なるべし。例祭にむかしは御輿を兵庫の津・和田の御崎まで神幸あり。その時、砂山・滝之寺ならびに村甲海上氏奉す。中頃この事絶えたり。今も遺風ありて、海上氏、烏帽子装束にて、八月二十日の祭には御輿の神役を勤む。農家に海上氏大切なるによつて、享保年中白川家より村田氏を賜るなり
祭神稚日女尊(わかひめのみこと)俗に天照大神の御妹とす。なは神秘あり
摂社(神殿東より、第一・住吉、第二・八幡。同西より、第一・諏訪、第ニ・日吉)裔神八前(みな域外にあり。一ノ宮・北野村・二の官・生田村・三ノ宮・神戸村、四の官・花熊村、五ノ官・平野村、七ノ宮・兵庫北浜町、六ノ宮・八ノ宮はともに坂本村にあり)
『日本紀』日く、
稚日女尊、斎服殿に坐しまして、神之御服を織りたまふ。素盞烏尊見し、すなはち斑駒を逆に剥ぎ、殿の内に投げ入る。稚日女尊、すなはも驚きて、機より堕ち、所持梭をもって体を傷らして、神退りましぬ。 同巻に云く「稚日女尊、誨へて日く、吾れ活田(いくた)の長狭国に居らんと欲す。因りて、海上五十狭茅(うなかむのいそきぢ)をもってこれを祭らしめたまふ」云々。
『三代実録』日く、  
貞観元年正月、従四位下を授け奉る。同十年二月、生田神に従三位を加ふ云々。
天照大神 本社の束、南向にあり。稲荷祠 本社の東、西向にあり。和歌官 稲荷の南に隣る。雷大臣祠 和歌官の南に隣る。神楽殿 中門の外、東の方。蛭千祠 中門の外、東向にあり。弁財天祠 中門の外、東向にあり。絵馬殿 西の方にあり。梶原井 中門の外、東の方にあり。箙梅 中門の外、西の方にあり。神功皇后釣竿竹 絵馬殿の南にあり。敦盛萩 中門の外、西の方にあり。生田池 社頭にあり。
 『夫木』   問へかしな生田池の月影も杜の秋風吹くにつけつつ      俊 成
 同     尋ねつついく田の池に玉もかる袖より秋の露も置きけり    範 宗
 同     月やどる活田の池の芦の薬にしも吹きかぬる秋の風かな  康 光
 同     哀れなり生田の池のあやめ草いかなる人のわかかよひけん 為 家
 『拾遺』  津の国の生田の池のいくたびかつらき心を我ぞみつらん   読人しらず
それ社頭は、前は海、後は山にして、生田の浦・生田海・活田川・生田杜・生田里等の古詠多し。海浜の神灯は夜走船の極と成り、磯辺の鳥井より本社まで、馬場八町ばかり、梅・桜左右に列なり、その中を海道貫きて、行人絶間あらず。梅旬ふ春のあしたより、鴛の初音神籬にのどけく、ことに箙の梅はくれなゐの色こく、むかしにかはらず。桜花の盛りは遠近人ここに円居して、酒のみ物食ひ、詩作りて幽艶を賞し、さながら雲と見れば雪と散り、磯うつ浪に誘ひつれて浦漕ぐ船に香を送る。そもそも桜の名所といふはみな山にして、吉野・嵐山などなり。ここは海浜にして汐風にもまれ、枝々風流にたわめるよそほひ、また寄なり。もとこの地は寿永・元暦の戦場にして、一ノ谷の城郭、生田の森は大手の軍門、源氏の五万騎ここに押しよせ、梶原が二度懸、あるは源太が花箙は、『源平盛衰記』に賞し、延元には尊氏と新田と生田森を後にあてて闘はれたる事『太平記』に見えたり。今は旧蹟のみにして、神徳はますますかがやき、四の海おだやかに、春秋の風色いとみやびやかに、摂津一州の勝地とぞ知られける。



一の鳥居


生田神社 神戸市中央区下山手通1-2-1
式内社 「日本書紀」では、大阪の住吉、西宮の広田、神戸の長田と、四社鎮祭と呼ばれています。
日本書紀に、201年に神功皇后の三韓外征の帰途、神戸港で船が進まなくなった為神占を行った所、稚日女尊が現れ「吾は活田長峡国に居らむと海上五十狭茅に命じて生田の地に祭らしめ。」との神託があり、ここに祭られました。

 
鳥居狛犬


大海神社 祭神:猿田彦大神 


松尾神社 祭神:大山咋神


三の鳥居


杉盛(すぎもり)

正月には門松の代わりに、スギの枝約2000本を束ね、頂上部には榊の枝と五穀豊穣を象徴する5束のススキの穂を飾る「杉盛」を立て、12カ月の福を祈る12本のしめ縄を楼門に繋ぎます。

始め布引の砂山に鎮座していましたが、延暦18年、布引の渓の大洪水で、松の木が根こそぎ流失し、倒れた松で社殿が壊れました。神守をしていた刀禰七太夫(とねしちだゆう)が神霊を背負って安住の地を求め、現在の生田の森に鎮座しました。このことから、松の木頼むに足らずとして、今でも生田の森には松の木は一本もありません。



楼門

 
青銅狛犬


拝殿


本殿  稚日女尊(わかひめのみこと) 東 八幡神社、住吉神社   西 日吉神社、諏訪神社


生田の池


生田弁財天 市杵島神社(市杵島姫命)


戸隠神社 祭神:天手力男命


蛭子髪社 祭神:蛭子尊


稲荷神社


塞神社(八衛比古命・八衛比売命)・雷大臣神社(中臣烏賊津連)・人丸神社(柿本人丸公)


弁慶の竹・神功皇后釣竿竹 神功皇后が備前の小川で鮎を釣られ、戦の勝敗を占った釣竿をここにさしてゆかれ、根付いたと伝えられます。


梶原の井(かがみの井)


東門

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