武庫山(むこやま) 武庫郡の西北にあり。東西五里、南北三里に跨る。中に数峯あり、一名六甲山といふ。
山頭に白山権現祠・神功皇后社・観音堂あり。二月初午の日群参す。西の峯に石の小祠あり、土俗石宝殿と呼ぶ。山中に水精を産す。極めて清潔にして、眼鏡に可なり。
諺に日く、当山はむかし仲衰天皇の先后大仲姫の二王子籠坂・忍熊、父帝崩じたもうて後、神功皇后を悪んで兵を発し、三韓より帰陣をここに待ちて屯す。その時、皇后早くこれを暁したまひて、武内宿禰を遣はし、軍計をめぐらし、籠坂王および五人の逆臣を誅して、この峯に埋む。その兜首六頭をもって六甲山と号す。
忍熊王は宇治川に沈め、その骸難波浦に流れ寄るを採って白鳥窟に葬るなり。委しきは前段河辺郡仲山寺輿院の下に見えたり。
   『夫木』    芦の葉に夕霧たちぬ難波かた武庫の川辺も色つきぬらん    家 隆
    同    木の葉ふく武庫の山風立ちぬらしあやしや軒に海士の釣船    慈 鎮
    同    秋の夜の務古の高根に雪ふりて津守の浦によする白玉    殷富門院大輔



  
       






六甲山(ろっこうさん)
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