和泉式部塔(いづみしきぶのとう) 古江村無二庵にあり。
式部は和泉守道貞(みちさだ)にしられて後、権太夫藤原保昌(やすまさ)丹後守と成って式部を娶る。
保昌は川辺郡平井の産なり。ゆゑに平井保昌と云ふ。保呂ある時狩に出でんとてその支度し、明日の今宵となりぬ。折から秋の半なれば鹿の鳴く声頻にいと嬾(ものう)く悲しくきこえければ、
  ことわりやいかでか鹿の鳴かざらんこよひ限りの命と思へば   式 部
と詠みしかば、保昌これを感じて永く狩を停めしとなり。今にこの墳の側を猟師通れば、その夜猟あらずとなん。
保昌の塚は川辺部小童寺にあり。みなこれ多田満仲公の従交の諸士なれば多くこのほとりにありけるなり。




無二寺(むにじ) 池田市古江町387
  曹洞宗


本堂





宝筺塔と五輪塔 石造 宝筺印塔  高さ205cm  大阪府指定有形文化財(昭和52年3月31日指定)
この宝筺印塔(ほうきょういんとう)は蓮華座の上に蕨手文(わらびでもん)を表す、類例があまりない文様の隅飾突起(すみかざりとっき)をもっている。 石材は花崗岩で、基礎の北西側面には「造立結縁(けちえん)人数」として、僧侶あわせて13人の名前が彫られている。また、基礎の北東側面には「貞和五己丑(つちのとうし・1349)五月三」と北朝の年号による建立年月日が彫られている。南北朝時代の完全な状態で残っている貴重な石造文化財である。

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