猪名野(ゐなの) 原、山、ともに古詠多し。すべてこの辺の惣号なるペし。『類聚名所』に云ふ、摂津国豊島・河辺両郡。
『三代実録』云ふ、
  詔して、左大臣従一位源朝臣信に、摂津国河辺郡為奈野を腸ふ。遊猟の地と為す。
また、同書に日く、
 貞観十五年八月、勅して、摂津国河辺郡為奈野を、二品行中務卿兼上野大守(光孝天皇の初めなり)親王に賜ふ。
 以つて遊猟の地と為す。百姓の樵蘇を禁ずることなかれ。
また、『同書』に日く、
 仁和元年正月三日、勅して、摂搾国為東野をもって、太政大臣の鳥を狩る野と為す。樵蘇放牧、旧に依って制することなかれ。
    『拾遺』     しながとりゐなのふしはらとぴわたる鴨の羽音のおもしろきかな     読人しらず
    『後拾』     いかばかり降る雪なればしながどりゐなのしぼ出道まよふらん     藤原有房
    『新古』     しながどりゐな野を行けばありま山夕霧たちぬ宿はなくして     読人しらず
    『続古』     かるもかくゐなのの原のかり枕さてもねられぬ月を見るかな     藤原隆祐朝臣
    
      
     
     





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