墨染寺(ぼくせんじ)伊丹寺町にあり。禅宗曹洞。京師深草里道元禅師の旧跡畢染寺荒廃により、伊丹の住人加楽井(からかゐ)氏といふ者、ここに遷して再興せり。その後荒木村重の菩提所と成る。加楽井氏は、後世上島氏と改む。
本尊釈迦仏(定朝の作)畢染薬師(定朝の作)。長三尺。伏見墨染よりここに遷す。
荒木村重塔 当寺仏殿の前にあり。
女郎塚(じょうろうづか)村重落城の時、城中女ばら土蔵に蟄れしを、寄せ手織田の軍勢焼討にせしょり、村民これを燐んでここに塔を築くなり。
鬼貫墓(おにつらのはか)当寺にあり。加楽井氏の支族なり。ゆゑに上島と号す。元文三年八月二目没す。仙林則翁居士と墓面に鐫ず。この苗孫今に存在す。
鬼貫は正風俳詣一方の豪傑なり。俳書『独書』(ひとりごと)を著す。『鬼貫旬選』は太舐選す。『によっぼり集』は半化房撰む。生涯名句多し。
によっぼりと秋の空なるふじの山 鬼 貫
月なくて昼もかすむや昆陽の池 同
春の水ところどころに見ゆるかな 同
咲くからに見るからに花の散るからに 同
墨染寺(ぼくせんじ) 伊丹市中央6-3-3
曹洞宗 華岳山 鍾楼門
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観音堂、薬師堂 平成7年(1995)改築。 | 本堂 本尊:薬師如来坐像 |
正和2年銘層塔 荒木村重の墓と伝えられてきた九層の石塔。
女郎塚
上島鬼貫の故郷墓と谷口与鹿の墓
鬼貫句碑 「秋ハ物の 月夜烏は いつも鳴(なく)」