虎宮火(とらのみやのひ) 別府村田圃の中に虎の宮といふ神祠の古跡あり。
この森より雨夜に火魂出でて、その辺を飛びめぐり、片山村の樹上に止まるといふ。これに遇ふ人大いに恐る。
また土人日く、火縄を見すれば忽ち消ゆるといへり。
按ずるに、初夏より霜雨の絞、湿地に暑熱籠りて陰陽剋し、自然と地中より火を生じ、地を去る事遠からず。
往来の人を送り、あるいは人に先立って飛びめぐるもあり。みな地中の陰火の発するなり。恐るるに足らず。
楊火をもって向ふ時は狐狸の火とても消ゆるなり。日中に顕はれざるにて知るべし。腐草化して螢となるの大なる物なり。
『天文志』にも見えたり。
此の伝承は、土地の人の間には定かではないが、味舌下浜に「虎宮」のあったことは伝えられている。 「虎宮」は現在味舌天満宮の末社に合祀されている。 また、味舌下浜に「虎の宮橋」という橋の名が残り、昔をしのぶ一つとなっている。 「みちしるべ」より |
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