泪地(なみだのいけ) 吹田村にあり。『夫木葉』摂津国。
 
   『真木』  よしさらば泪の池に身をなして心のままに月やどるらん   西行
     同  袖はひぢ涙の池に目はなりて影見まほしき音をのみぞなく  成尋法師母
俗諺に云ふ、むかしこの地に悪七兵衛景清(かげきよ)が伯父入道大日坊とてあり。寿永の頃八島の軍敗れ逃れきて、ここに蟄す。
伯父入遺眠蔵(めんぞう)に隠し軍労を扶く。ある日温麦(あつむぎ)を早く打てといふを景清、伯父入道心替はりしてわれを討つて源氏の方へいださんと謀ると思ひ、忍んで入道を害し寺を逃げ去り、この池水にて血刀を洗ふ。これより世に悪七兵衛といふ。
その後我が訛(あやまり)を知つて池水を手向とし亡霊を弔ふ。ゆゑに景清泪池と称す。これ妄談にして土人の口称にのみ遺れり。
泪地、西成郡小松村にも同名あり。
古人の和歌あれば寿永以前の名なるペし。





泪之池遊園(なみだのいけゆうえん) 吹田市内本町3
この遊園は、かつて小さな池でありました。
誤って伯父の大日坊能忍(だいにちぼうのうにん)を切ってしまった平景清が、
夜な夜なこの池で泪を流したとも伝えられ、泪の池と呼ばれています。



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