道頓堀(どうとんぼり) 大坂の南極なり。東横堀より流れて日吉橋の西にて木津川に入り海に会す。
 『新後撰』    夕暮に難波わたりをきてみればただ薄墨のあしでなりけり     行 慶
大僧正行慶は『新後援集』に詠みたまへども、道頓堀島之内の夕気色は都に劣らぬ、難波女の色白く清らかに出で立ちて錦繍をまとひ珠の髪指(かんざし)露ちるばかり、女伶(げいこ)あり男娼(やろう)あり、送るあり迎ひあり、芝居側の囂(かまびす)しきは四時たえまなし。
まづ初春の十日蛭子より梅匂ひ初花ひらく頃天王寺の聖霊会、彼岸参り、寺社の開帳、住吉の汐干、五月の御田植、みな月の夏祭、船遊びの花火、難波の夕涼、名月、後の月、鯊魚(はぜ)つり、蟶(まて)とり、十夜講、蛭子講、雪の曙に夜の顔見世、あるは月ごとの大帥巡、宵薬師、宵庚申、勧進能、大相撲までみなこの里の賑ひにして、下風(たいこ)の声色(こわいろ)法師の琴の音常にして、難波江の流れ絶えずしてもとの流れにあらず。
その流れの身のしばし止まりて堰に花の散りかかる俤(おもかげ)なるべし。








道頓堀(どうとんぼり)は、木津川と東横堀川を結ぶ全長約2.5kmの運河。

戎橋(えびすばし)  




道頓堀川閘門(どうとんぼりがわかんもん)
平成12年竣工。竹中土木施工。

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