山伏松(やまぶしまつ) 本庄の森にあり。千余載を経りたる古松にして、枝葉四方へ俯挽れて青年のごとし。諺に云ふ、婦人旅立ちの時、この松の菜を懐にして、難波津にさくやこの花冬ごもりと上の句を唱ふれば、何日も経水なし、今をはるべと咲くやこの花と下の句をよめば、たちまち経水通ずとぞ。庶民もっぱら口号に膾炙する事なれば、捨てがたくここに述ぶるのみ。

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