○経堂 太子堂の北の隅にあり。二間四方。如意輪観音安置す。毎年三月二日未の刻、経供養あり。
寺説に日く、この経供養と申すは、震旦国より渡りし仏経を供養ありし遺法なり。太子の御時、経論あまた渡りし中に、太子先身の時書写したまふ法華経を求めに、臣下妹子大臣を唐土衡山へ遣はしむ。妹子臣かの山に至り法華経を得て帰朝す。太子拝覧したまふに、これ先身奉拝御経にあらずとて、夢殿に籠らせたまひて、つひにかの御経を得たまふ。太子薨御の後、山背大兄王六時に礼拝したまひて供養ありしが、後にいづちともなく見えずなりにき。今法隆寺にあるは妹子将来の妙典なりとぞ。その後星霜累なりて、当山の宝蔵に一つの古き経匣あり。これを開き見るに一行三十四字全部一巻の法華経なり。疑ふ所なき夢殿の御経ならんとて、今宝庫に蔵めらる。されば慈鎮和尚この寺の百首の歌の中に。
 『夫木』   般若台に納め置きてし法華経もゆめどの内ぞうつつには見し  慈 鎮
 『雪玉集』に見えたる逍遙院実隆卿の和歌も、この経拝見の時よみたまふ歌なり。初め金堂の下に見えたり。 


経堂  本尊:如意輪観音
『勝鬘経』『維摩経』『法華経』の三経、「三経義疏」をはじめ高麗大蔵経・昭和荘厳経等が納められている。
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