○亀井水(かめゐのみず)宝蔵の南にあり。楼を亀井堂といふ。
桁行六間三尺、梁行三間五寸。霊泉は金堂の中なる青竜池より流れ出づろなり。白き石の間より玉のごとく清泉涌出するより、白石玉出水となづく。また皇太子御姿をうつし楊枝の御影を書かせたまふにより、影向井ともいふ。また石鐫の亀より流れ出づるより亀井ともいふ。あるがいはく、白石玉川水の旧跡は一心寺本堂の西、竹林の中にありとぞ。むかしは境地広くして、この地も廓内にして亀井水の名あるか。『本願縁起』云ふ「地には七宝を敷けり。ゆゑに青竜つねに守護し麗水東に流る。これを号けて白石玉川水と云ふ。慈悲心をもってこれを飲めば法菜となる」と云々。
 『後拾遺』 万代をすめる亀井の水やさはHの小川のながれなるらん 弁乳母
 『新古今』
   天王寺亀井の水を御覧じて
にごりなき亀井の水をむすびあげて心の塵をすすぎつるかな

 上東門院
 『続後撰』 しら石の玉出の水を手に汲みて結ぶちぎりの末はにごらじ 前太政大臣
 『新後撰』 まれにとて御法の跡を来て見ればうき木にあへる亀井なりけり 郁芳門院安芸
 『山家』
   天王寺へ参りて亀井の水を見てよめる
浅からぬちぎりの程ぞくまれぬる亀井の水に彫うつしつつ

 西行法師
 『拾遺脇草』   諸人のむすぷ契りは志るなよ亀井の水に劫はへぬとも 定 家
 『拾玉』 末の世に亀井まですむ影にてぞひろくしきける光とはしる  慈 鎮
 『夫木』 万代も御法のながれたえじとや亀井の水の清くすむらん 俊 成
  まれにきてむすぷ亀井のみづからやうき木にあへるたぐひなるらん   遺遙院


亀井堂  本尊:地蔵尊
昭和30年に再建。東西4間、西側を亀井の間、東側を影向の間と呼ばれ、左右に馬頭観音と地蔵菩薩があります。


亀井堂の霊水は金堂の地下より湧く白石玉出の水といわれる。


回向を済ませた経木を流せば極楽往生が叶うとされる。
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